インビザライン矯正中の食事制限〜専門医が教える対処法
目次
インビザライン矯正中の食事制限とは?基本的なルール

インビザライン矯正を始めると、「これからの食事はどうなるんだろう?」と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。透明なマウスピースで目立たない矯正が魅力のインビザラインですが、食事に関する基本ルールを知っておくことが治療成功の鍵となります。
従来のワイヤー矯正では、装置が固定されているため食べ物の種類に多くの制限がありました。硬いものや粘着性の高いものを避ける必要があり、日常の食事に気を遣う場面が多かったのです。
一方、インビザライン矯正の最大の特徴は、マウスピースを自由に取り外せること。食事の際にマウスピースを外すことで、基本的には食べ物の制限なく、普段通りの食事を楽しむことができます。これはインビザライン矯正の大きなメリットの一つです。
しかし、インビザライン矯正中の食事には守るべき重要なルールがあります。それは「食事の際には必ずマウスピースを外す」ということ。この基本ルールを守ることで、治療効果を最大限に引き出し、トラブルを防ぐことができるのです。
マウスピースを外さずに食事をするとどうなる?リスクと対処法
「マウスピースを外すのが面倒だから、装着したまま食事をしてしまおう…」と考えたことはありませんか?
私は歯科医師として多くの患者さんを見てきましたが、マウスピースを装着したまま食事をすることで生じるリスクは決して小さくありません。装着したまま食事をすると、以下のような問題が発生する可能性があります。
虫歯・歯周病のリスク増加
マウスピースと歯の間に食べかすが挟まり、長時間放置されると虫歯や歯周病のリスクが高まります。特に糖分の多い食べ物や粘着性の高い食べ物は要注意です。
通常、食事後の口内は唾液の自浄作用によって洗浄されますが、マウスピースを装着していると、この作用が妨げられてしまいます。食べかすが歯の表面に長時間付着したままになると、細菌が増殖し、虫歯や歯周病の原因となるのです。
マウスピースの破損・変形
食事の際に噛む力は40〜60kgにもなります。マウスピースを装着したまま食事をすると、この強い力によってマウスピースが破損したり、変形したりする可能性が高くなります。また、熱い食べ物や飲み物によってマウスピースが変形してしまうこともあります。
マウスピースが歯に合わなくなると、矯正力が正しくかからなくなり、計画通りに歯が動かなくなってしまいます。その結果、治療期間が延びたり、追加費用が発生したりする可能性もあるのです。
マウスピースへの着色・変色
カレーやコーヒー、赤ワインなど、色の濃い食べ物や飲み物は、マウスピースに着色汚れが付いてしまう原因となります。一度着色してしまうと、完全に落とすことは難しく、せっかくの「目立たない矯正」という利点が損なわれてしまいます。
透明なマウスピースが黄ばんだり、シミができたりすると、かえって人目を引いてしまうことになりかねません。インビザラインの最大の魅力である「目立たない」という特徴を維持するためにも、マウスピースを装着したまま食事をすることは避けるべきでしょう。
インビザライン矯正中に控えた方が良い食べ物・飲み物

インビザラインは食事の際にマウスピースを外せるため、基本的には食事制限がないと言われています。しかし、矯正治療の効果を最大限に引き出し、お口の健康を守るためには、いくつかの食べ物・飲み物は控えた方が良いでしょう。
硬い食べ物
氷や硬いおせんべい、フランスパンのような硬い食べ物は、マウスピースを外して食べる場合でも歯や顎に過度な力がかかり、矯正治療に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、アタッチメント(歯に付ける小さな突起物)が装着されている場合は、硬いものを噛むことでアタッチメントが外れてしまうリスクもあります。できるだけ控えるか、小さく切ってから奥歯でゆっくりと噛むようにしましょう。
粘着性のある食べ物
キャラメルやガム、お餅など、粘着性の高い食べ物は、歯にくっつきやすく虫歯の原因になるため注意が必要です。また、アタッチメントに付着して取れにくくなることもあります。
どうしても食べたい場合は、食べた後すぐに丁寧に歯磨きをして、食べかすを完全に取り除きましょう。デンタルフロスを使用すると、歯と歯の間の食べかすもしっかり除去できます。
色の濃い食べ物・飲み物
カレー、コーヒー、赤ワインなど色の濃い食べ物や飲み物は、歯に色素が沈着しやすく、黄ばみや着色の原因になります。特に矯正中は、アタッチメントの周りに着色しやすくなるため注意が必要です。
色の濃い食べ物や飲み物を摂取した後は、すぐに水で口をゆすぐか、可能であれば歯磨きをすることをおすすめします。どうしても歯磨きができない場合は、無糖のガムを噛むことで唾液の分泌を促し、口内を洗浄する効果が期待できます。
インビザライン矯正中の間食と食事回数について
「インビザライン矯正中は間食を控えた方がいいの?」という質問をよく受けます。結論から言うと、間食そのものが禁止されているわけではありませんが、マウスピースの装着時間を考えると、間食は控えめにした方が良いでしょう。
インビザライン矯正では、マウスピースを1日20時間以上装着することが推奨されています。朝・昼・晩の3食で食事と歯磨きの時間を合わせると約4時間。この時間内に間食も含めなければならないのです。
間食の頻度と装着時間のバランス
間食の回数が増えるほど、マウスピースを外している時間も長くなります。マウスピースの装着時間が短くなると、矯正の効果が十分に得られず、治療期間が延びてしまう可能性があります。
もし間食がどうしても必要な場合は、食事の直後に済ませるのがおすすめです。例えば、昼食後にデザートとして甘いものを食べれば、マウスピースを外す回数を増やさずに済みます。
矯正治療を始めたばかりの頃は、この一連の行為が億劫に感じるかもしれませんが、徹底することで美しい歯並びを手に入れることができます。健康と美しさのためにぜひ心がけてください。
インビザラインでダイエット効果?
実は、インビザライン矯正中に体重が減少したという報告も少なくありません。これは「インビザラインダイエット」と呼ばれることもあります。
マウスピースの着脱が必要なため、間食の回数が自然と減り、食事の量も適量になりやすいからです。また、食後には必ず歯磨きをする習慣がつくため、だらだら食べの習慣も改善されます。
ただし、過度な食事制限は栄養不足を招く可能性があるため、バランスの取れた食事を心がけましょう。矯正治療中も、必要な栄養素はしっかり摂取することが大切です。
インビザライン矯正中の飲み物について
「コーヒーが大好きなんですが、インビザライン矯正中も飲めますか?」という質問もよくいただきます。飲み物に関しても、いくつか注意点があります。
マウスピース装着中に飲める飲み物
基本的に、マウスピースを装着したまま飲んでも良いのは「常温の水」のみです。水であれば、マウスピースを傷めることもなく、着色の心配もありません。
ただし、冷たすぎる水や熱い飲み物は、マウスピースの変形を引き起こす可能性があるため避けた方が無難です。特に熱い飲み物は、マウスピースの素材を変形させてしまうリスクが高いです。
避けるべき飲み物
コーヒー、紅茶、赤ワイン、カラフルなジュースなどの色素の強い飲み物は、マウスピースの着色や歯の着色の原因となります。また、砂糖を含む飲み物や酸性の強い飲み物(炭酸飲料やスポーツドリンクなど)は、虫歯のリスクを高めます。
これらの飲み物を飲む場合は、マウスピースを外し、飲み終わった後に歯を磨いてからマウスピースを装着し直すようにしましょう。
どうしてもコーヒーや紅茶を飲みたい場合は、ストローを使用するという方法もあります。ストローを使えば、飲み物が歯に直接触れる機会が減り、着色のリスクを軽減できます。
また、飲み物を飲んだ後は、すぐに水で口をゆすぐことも効果的です。歯磨きができない状況でも、水でゆすぐだけでも着色物質を洗い流す効果が期待できます。
インビザライン矯正中の外食時の注意点
「外食の機会が多いのですが、インビザライン矯正中でも問題ないですか?」というご質問もあります。外食時には以下の点に注意しましょう。
外食前の準備
外食の際は、マウスピースケースと歯ブラシセットを持参することをおすすめします。食事の前にトイレなどでマウスピースを外し、専用ケースに保管しましょう。決して紙ナプキンなどに包んで置かないでください。紛失や破損のリスクが高まります。
また、外食先でも可能な限り食後に歯磨きをするのが理想的です。歯ブラシを持参していない場合は、水で口をしっかりゆすぐだけでも効果的です。
周囲への配慮
外食時にマウスピースを外す際は、周囲の目を気にする方もいらっしゃるでしょう。その場合は、トイレなど人目につかない場所で外すと良いでしょう。
また、食事中に歯に付いているアタッチメント(小さな突起物)が気になる方もいますが、実際には他人からはほとんど気づかれません。自信を持って食事を楽しみましょう。
外食後すぐに歯磨きができない場合は、水でしっかり口をゆすいでから一時的にマウスピースを装着し、帰宅後に改めて丁寧に歯磨きをしてマウスピースを洗浄するという方法もあります。
インビザライン矯正中のマウスピースケアと口腔ケア
インビザライン矯正を成功させるためには、マウスピースのケアと口腔ケアが欠かせません。日々のケアを徹底することで、トラブルを防ぎ、快適な矯正生活を送ることができます。
マウスピースの洗浄方法
マウスピースは毎日洗浄することが大切です。洗浄方法としては、ぬるま湯と中性洗剤を使用する方法がおすすめです。歯ブラシで優しくブラッシングし、流水でしっかりすすぎましょう。
また、専用の洗浄剤も市販されていますので、それらを使用するのも効果的です。ただし、熱湯での洗浄は避けてください。マウスピースが変形してしまう可能性があります。
歯磨きの重要性
インビザライン矯正中は、通常以上に丁寧な歯磨きが求められます。食後は必ず歯磨きをし、歯間ブラシやデンタルフロスも活用して、歯と歯の間の汚れもしっかり除去しましょう。
特に、アタッチメントが付いている歯は、その周囲に汚れが溜まりやすいため、念入りに磨くことが大切です。電動歯ブラシを使用すると、より効果的に汚れを落とすことができます。
また、定期的な歯科検診も欠かさないようにしましょう。プロによるクリーニングで、自分では落としきれない汚れを除去することができます。
まとめ:インビザライン矯正中の食事制限を乗り切るコツ
インビザライン矯正中の食事制限について、専門医の立場からポイントをまとめました。インビザラインは従来のワイヤー矯正と比べて食事の制限が少ないものの、いくつかの注意点があることをご理解いただけたと思います。
最も重要なのは、食事の際には必ずマウスピースを外すこと。そして食後は歯磨きをしてからマウスピースを装着し直すという基本ルールを守ることです。この習慣を身につけることで、虫歯や歯周病のリスクを減らし、マウスピースの変形や着色を防ぐことができます。
また、硬いものや粘着性の高いもの、色素の強い食べ物や飲み物は控えめにすることで、矯正治療をよりスムーズに進めることができます。間食の回数も必要最小限に抑え、マウスピースの装着時間を確保することが大切です。
インビザライン矯正は、患者さん自身の協力が治療成功の鍵となります。最初は面倒に感じるかもしれませんが、これらのルールを守ることで、より短期間で理想の歯並びを手に入れることができるでしょう。
美しい歯並びは、見た目の印象を良くするだけでなく、お口の健康にも大きく貢献します。ぜひ、この記事を参考に、インビザライン矯正中の食生活を工夫してみてください。
さらに詳しい情報や、あなたの歯並びに合わせた具体的なアドバイスが必要な場合は、ぜひくろさき歯科にご相談ください。インビザライン認定医が、あなたの疑問や不安にお答えします。
院長・監修医師
黒崎 俊一(kurosaki syunichi)

歯学博士/日本補綴歯科学会「専門医」
経歴・資格
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1987年(昭和62年) 日本大学歯学部 卒業
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1992年(平成4年) 日本大学大学院 歯学部 補綴専攻 修了・歯学博士取得
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1996年(平成8年) くろさき歯科 開院(当院開業)
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日本補綴歯科学会認定「専門医」/日本歯科審美学会会員/日本矯正歯科学会会員
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日本大学歯学部 兼任講師として教育にも従事









